ウナギ釣りデータからの考察
ウナギ釣りデータからの考察



○はじめに
ウナギ釣りは特殊な釣りです。他の魚とは異なり、時合と呼ばれる、日没後のほぼ決まった時間に釣れ、濁っていないと釣れない。 このページでは、私自身の2007年の釣り結果のデータを元に、ウナギ釣りにおける、 蒲焼きサイズを釣るための重要条件について考察します。

【データについて】
2007年5月〜10月にかけて、 私が東海地方の汽水域で行ったウナギ釣りの日付、釣行時間、場所等を記録しました。 尚、各考察について、回数にズレがありますがこれは各項目を比較する上で曖昧なデータを除いていることによります。
※ちなみに、蒲焼き及び白焼きに適したサイズは40cm以上です。それに満たないものはメソ(30cm〜40cm未満)、エンピツ(30cm未満)と呼ばれ、 蒲焼きには適していません。

【ウナギ釣りの方法】
私は次の二種の方法でウナギ釣りを行いました。
 ・ぶっこみ釣り:投げ竿で、道糸の先にオモリ(6〜20号)と針(ウナギ針13〜14号)を付け、投げ込む。
 ・ペットボトル釣法:ペットボトルに道糸を巻きつけ、オモリ(6〜8号)と針を付け、投げ込む。 (参考:日淡会 ペットボトル釣法
ページ内の表には載せていませんが、殆どをこのうちのペットボトル釣法で釣っています。 この釣り方は道具は簡単ですが、効率良く沢山のウナギが釣れるため重宝しています。



【ウナギの釣れる場所】
ウナギは太平洋側の海と繋がっている感潮域(汽水域)であれば大抵どこにでもいます。 従ってありとあらゆる場所で釣れます。隠れ家のようなものがある場所がポイントと よく言われますが、根がかりの全くないような砂泥地にもかかわらず、比較的太いウナギが よく釣れている場所もあります。隠れ家のある場所はウナギも多い印象がありますが、 小型のものが多かったり、よく根がかりしたりと、必ずしも良いとも言えません。 (石積みなどのある場所でも、潮通しが悪いとあまりウナギはいません) とりあえず、釣りやすそうな場所を明るいうちに探しておき、そこで釣ってみたら いいと思います。

【ウナギと濁り度】
ウナギは濁っていないとなかなか釣れません。しかしながら濁っていれば良いというわけでも ありません。ここでは濁り具合(濁り度)を、5段階で表しました。
濁り度 ようす
5 水に透明感が無く、全体が泥色。台風後などの豪雨の後にこの状態になる。
4 透視度20センチ前後。5に比べれば薄いが、薄茶色を帯びている。
3 透視度40センチ前後。「泥濁り」の一歩手前で、灰色のような色に見える。
2 普段と比べれば濁ってはいるものの、濁り具合が甘い。いわゆる「笹濁り」
1 ほとんど濁っておらず、澄んでいる。

ここでは簡単な色見本を載せていますが、この色も川によって微妙に異なります。 また濁りとは言っても、生活排水や微細藻類による濁りではウナギはあまり釣れません。 大雨による増水や、田圃の代掻き水による濁りといった、水の動きを伴う濁りの発生で よく釣れます。

<表1>(濁り度とウナギが釣れたかどうか)
日付 濁り度 釣果 日付 濁り度 釣果 日付 濁り度 釣果 日付 濁り度 釣果
5月21日 3 6月25日 3 7月19日 4 × 9月30日 2
5月24日 4 × 6月26日 4 7月22日 2 10月1日 3
5月25日 3 × 7月3日 3 8月4日 3 10月2日 2
5月26日 2 × 7月5日 4 9月12日 2 × 10月4日 1
5月28日 1 × 7月6日 3 9月14日 4 × 10月5日 2
5月30日 3 7月12日 3 9月16日 3 10月8日 2
6月3日 2 7月13日 4 9月17日 2 10月19日 2 ×
6月4日 3 × 7月15日 3 9月18日 2 10月20日 1
6月18日 2 7月16日 4 9月21日 1 × 10月29日 3
6月19日 1 × 7月17日 4 9月27日 2 ×
6月23日 2 × 7月18日 4 9月29日 1 ×

<表2>(濁り度と40cm以上のウナギが釣れたかどうか)
日付 濁り度 釣果 日付 濁り度 釣果 日付 濁り度 釣果 日付 濁り度 釣果
5月21日 3 6月25日 3 × 7月19日 4 × 9月30日 2
5月24日 4 × 6月26日 4 7月22日 2 × 10月1日 3
5月25日 3 × 7月3日 3 8月4日 3 10月2日 2
5月26日 2 × 7月5日 4 9月12日 2 × 10月4日 1
5月28日 1 × 7月6日 3 9月14日 4 × 10月5日 2
5月30日 3 7月12日 3 9月16日 3 10月8日 2
6月3日 2 × 7月13日 4 9月17日 2 10月19日 2 ×
6月4日 3 × 7月15日 3 9月18日 2 × 10月20日 1 ×
6月18日 2 × 7月16日 4 × 9月21日 1 × 10月29日 3
6月19日 1 × 7月17日 4 9月27日 2 ×
6月23日 2 × 7月18日 4 × 9月29日 1 ×

<表3>(濁り度と50cm以上のウナギが釣れたかどうか)
日付 濁り度 釣果 日付 濁り度 釣果 日付 濁り度 釣果 日付 濁り度 釣果
5月21日 3 6月25日 3 × 7月19日 4 × 9月30日 2
5月24日 4 × 6月26日 4 × 7月22日 2 × 10月1日 3
5月25日 3 × 7月3日 3 8月4日 3 10月2日 2
5月26日 2 × 7月5日 4 9月12日 2 × 10月4日 1 ×
5月28日 1 × 7月6日 3 9月14日 4 × 10月5日 2 ×
5月30日 3 7月12日 3 9月16日 3 10月8日 2 ×
6月3日 2 × 7月13日 4 9月17日 2 10月19日 2 ×
6月4日 3 × 7月15日 3 9月18日 2 × 10月20日 1 ×
6月18日 2 × 7月16日 4 × 9月21日 1 × 10月29日 3
6月19日 1 × 7月17日 4 × 9月27日 2 ×
6月23日 2 × 7月18日 4 × 9月29日 1 ×

表1〜3は濁り度と、ウナギが釣れたかどうかについて示したものです。 これらの表に従ってウナギの釣れた確率を計算してみると、

<表1>
濁り度4:6/9(67%) 濁り度3:11/13(85%) 濁り度2:9/14(64%) 濁り度1:2/6(33%) 
<表2>
濁り度4:4/9(44%) 濁り度3:10/13(77%) 濁り度2:5/14(36%) 濁り度1:1/6(17%)
<表3>
濁り度4:2/9(22%) 濁り度3:10/13(77%) 濁り度2:3/14(21%) 濁り度1:0/6(0%)

数字では分かり難いのでさらにグラフ化したのが下の図です。





これを見ると、<表1>のウナギ全体でみた数値では釣れた確率は濁り度2〜4まではさほど差がないように感じます。 しかし、<表2>蒲焼きサイズの40cm以上にサイズを絞ると濁り度3では77%と、さほど確率は変わっていませんが濁り度2、4は 確率が下がり、さらに<表3>50cm以上にサイズを絞ると、濁り度3は77%と変わらない一方、濁り度2では21%、濁り度4では 22%と、明らかに確率が低くなっています。よって、蒲焼きに適した大きなウナギを釣るためには、濁り度3の日に釣りに行くのが 適当と考えられます。
また、これは傾向でしかありませんが、5−7月を第一シーズン、9−10月を第二シーズンとすると、第二シーズンには濁りが 少し薄くても中大型のウナギが釣れるようになっています。 ウナギは9月中頃になると河口域に集まり始め、晩秋には産卵のため海に下っていきます(クダリ)。完全なクダリの個体は 餌を摂らないようですが、クダリ直前の個体がいわゆる“荒食い”状態となって、多少濁りが薄くても餌を摂るようになると考えられます。



【ウナギと潮】
一般に潮の影響を受ける水域の魚は、大潮の時ほど潮が大きく動くのでよく釣れる、と聞きます。では、ウナギはどうなのでしょうか。

<表4>(潮とウナギが釣れたかどうか)
日付 釣果 日付 釣果 日付 釣果 日付 釣果
5月21日 中潮 6月25日 若潮 7月19日 中潮 × 9月30日 中潮
5月24日 小潮 × 6月26日 中潮 7月22日 小潮 10月1日 中潮
5月25日 小潮 × 7月3日 中潮 8月4日 小潮 ※× 10月2日 小潮
5月26日 長潮 × 7月5日 中潮 9月12日 大潮 × 10月4日 小潮
5月28日 中潮 × 7月6日 小潮 9月14日 中潮 × 10月5日 長潮
5月30日 大潮 7月12日 中潮 9月16日 中潮 10月8日 中潮
6月3日 中潮 7月13日 大潮 9月17日 小潮 10月19日 小潮 ×
6月4日 中潮 × 7月15日 大潮 9月18日 小潮 10月20日 長潮
6月18日 中潮 7月16日 中潮 9月21日 若潮 × 10月29日 中潮
6月19日 中潮 × 7月17日 中潮 9月27日 大潮 ×
6月23日 小潮 × 7月18日 中潮 9月29日 中潮 ×

<表5>(潮と40cm以上のウナギが釣れたかどうか)
日付 釣果 日付 釣果 日付 釣果 日付 釣果
5月21日 中潮 6月25日 若潮 × 7月19日 中潮 × 9月30日 中潮
5月24日 小潮 × 6月26日 中潮 7月22日 小潮 × 10月1日 中潮
5月25日 小潮 × 7月3日 中潮 8月4日 小潮 10月2日 小潮
5月26日 長潮 × 7月5日 中潮 9月12日 大潮 × 10月4日 小潮
5月28日 中潮 × 7月6日 小潮 9月14日 中潮 × 10月5日 長潮
5月30日 大潮 7月12日 中潮 9月16日 中潮 10月8日 中潮
6月3日 中潮 × 7月13日 大潮 9月17日 小潮 10月19日 小潮 ×
6月4日 中潮 × 7月15日 大潮 9月18日 小潮 × 10月20日 長潮 ×
6月18日 中潮 × 7月16日 中潮 × 9月21日 若潮 × 10月29日 中潮
6月19日 中潮 × 7月17日 中潮 9月27日 大潮 ×
6月23日 小潮 × 7月18日 中潮 × 9月29日 中潮 ×

<表6>(潮と50cm以上のウナギが釣れたかどうか)
日付 釣果 日付 釣果 日付 釣果 日付 釣果
5月21日 中潮 6月25日 若潮 × 7月19日 中潮 × 9月30日 中潮
5月24日 小潮 × 6月26日 中潮 × 7月22日 小潮 × 10月1日 中潮
5月25日 小潮 × 7月3日 中潮 8月4日 小潮 10月2日 小潮
5月26日 長潮 × 7月5日 中潮 9月12日 大潮 × 10月4日 小潮 ×
5月28日 中潮 × 7月6日 小潮 9月14日 中潮 × 10月5日 長潮 ×
5月30日 大潮 7月12日 中潮 9月16日 中潮 10月8日 中潮 ×
6月3日 中潮 × 7月13日 大潮 9月17日 小潮 10月19日 小潮 ×
6月4日 中潮 × 7月15日 大潮 9月18日 小潮 × 10月20日 長潮 ×
6月18日 中潮 × 7月16日 中潮 × 9月21日 若潮 × 10月29日 中潮
6月19日 中潮 × 7月17日 中潮 × 9月27日 大潮 ×
6月23日 小潮 × 7月18日 中潮 × 9月29日 中潮 ×

濁り度の項と同様に、表4〜6から釣れた確率をそれぞれ計算すると、

<表4>
大潮:3/5(60%) 中潮:15/21(71%) 小潮他:10/16(63%)
<表5>
大潮:3/5(60%) 中潮:11/21(52%) 小潮他:6/16(38%)
<表6>
大潮:3/5(60%) 中潮:8/21(38%) 小潮他:4/16(25%)

となっています。大雑把に見ると大潮の日の確率が高いように思えますが釣行数が中潮、小潮他に比べ少ないため、信用できる 数値とは言えないように思います。中潮、小潮他についてはほぼ同じようにサイズを絞るにつれて確率が低下していて、 若干中潮の方がよく釣れている印象もありますが、意味のある数字には思えません。ちなみに今日(7月10日)は長潮と、 最悪の潮回りでしたが、40cm以上4本という釣果でした。
ウナギ釣りには、潮の良し悪しはあまり重要ではないようですが、潮位(水位)は重要なポイントです。いつも釣れるポイントで、 濁っていても、浅すぎて釣れないということが時々あるため、事前に釣行時間の潮位を調べておくと安心です。 また、“釣りやすさ”という観点から見れば、上げ潮〜上げ止まりの潮回りの日はウナギ釣り日和かもしれません。

【ウナギと時合】
ウナギ釣りで濁りと共に重要なのが時合です。いつでも釣れるハゼなどとは異なり、ウナギは集中的に釣れる時間と、全く釣れないに近しい時間の差が はっきりしています。

<表7>(日没とウナギの釣れた時間)
日付 場所 釣行時間 日没 時合 日付 場所 釣行時間 日没 時合
5月21日 A1 19:25-21:20 18:54 19:55-20:10 9月16日 B1 18:20-20:40 18:01 19:02,19:25,19:50
5月30日 C1 19:30-20:40 19:00 20:00過ぎ頃 9月17日 B1 18:25-20:10 17:59 19:30-20:00
6月18日 A3 19:20-21:00 19:09 20:00過ぎ頃 9月18日 A1 18:25-19:45 17:58 19:02
6月25日 A3 19:25-21:25 19:11 20:00前後,20:20,21:11,21:20 9月30日 B1 18:00-21:00 17:40 18:10,19:00,20:00過ぎ頃
6月26日 D 19:30-1:00 19:11 20:02,20:32,21:00過ぎ頃 10月1日 A2 18:00-20:20 17:39 18:20,18:40
7月3日 B2 19:40-21:10 19:12 20:06 10月1日 A1-b 21:20-1:00 17:39 21:28,21:40,22:00,22:07
7月5日 B2 19:55-21:00 19:11 20:13,20:24,20:32,20:45 10月2日 A1-b 18:10-22:10 17:38 18:52,21:40
7月6日 B2 19:45-21:00 19:11 20:14 10月4日 A1-b 18:30-21:50 17:35 19:40-50頃
7月15日 E 19:30-21:50 19:08 19:40頃,20:30頃 10月5日 A1-b 18:00-20:50 17:33 20:03
7月16日 E 19:30-21:00 19:07 19:50頃 10月8日 B1 18:00-21:00 17:29 19:05,19:10
7月17日 A1 19:30-21:00 19:07 20:36,21:00頃過ぎ 10月20日 E 17:45-20:30 17:14 19:00前頃,19:30
7月22日 G 19:30-20:10 19:05 19:37 10月29日 D 17:40-20:50 17:04 18:10前後,18:49,19:32

ここでは、ウナギの釣れた日の、日没時間と釣行時間、ウナギの釣れた時間を表にしました。 細かい表で分かりにくいのですが、およそ日没後30分〜1時間後から釣れ始め、遅くとも 日没後2時間後には釣れなくなっています。 A1-bは特に時間に大きなズレがありますが、これは強い光源が付近に存在するためと考えられます。 ウナギの時合は、場所によって、またその他の条件によってズレが生じることが間々あります。


○まとめ
蒲焼きサイズの良いウナギを釣るには・・・

1)濁り度3
2)日没後30分〜2時間

この条件で釣ることができる日を選ぶのが理想です。

○参考・引用文献、HP
・日本淡水魚類愛護会;ペットボトル釣法http://tansuigyo.maxs.jp/a/link36.html
・潮位10分割(スマイルネットBBS)http://homepage3.nifty.com/ooue_h-h/tide/tide_s.html




日本淡水魚類愛護会の西村氏には助言を頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。



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