ウナギの焼き方
ウナギの焼き方



○はじめに
串打ち三年焼き一生という言葉がありますが、 ウナギの調理で最も重要なのが「焼き」です。この焼き方次第で、良質のウナギが美味しく食べられるかどうか決まると 言っても過言ではないでしょう。焼き方にも炭火、ガスなど色々ありますが、ここでは最も手軽で、簡単なガスコンロ での焼き方を紹介します。
※フラッシュ撮影のため、一部色が見難かったりする部分がありますがご了承下さい。



【道具】
串(3〜5本。金属製の丸串が望ましい)、魚焼き器、アルミホイル、ハケ



【串打ち】
まずは焼く前に串を打ちます。串を打つことにより“返し”がしやすくなり、またウナギの身がふっくらと仕上がります。 竹串だと再利用が難しく、途中で焦げ落ちてしまうこともあるので私は避けています。金串は熱した付近が非常に熱くなる ため、なるべく長いものが良いでしょう。また、打つ串の本数は多い方が焼きやすく、私の経験上5cm間隔くらいで打つのが 最良だと思います。串の本数が少ないと、返しやタレ付けの際にウナギが崩れたりする確率が増します。(特に脂の乗った大きなウナギ)
写真では平串を使用していますが、丸串の方が返しやすく、また焼けたあとに外しやすいという利点があります。
何等分か好みの大きさに切ったウナギの身に串を打っていきます。 串は身と皮の間、それよりほんの少し身側を通るようにします。あまり身側だとよく脂の乗ったウナギでは返す際に 串が外れてしまいます。尻尾のように身の薄い部分は一部皮に串を通すと外れにくく焼きやすいです。

【焼き】
焼きには魚焼き器を使用します。もちろん備長炭などで本格的(?)焼いた方が美味しく焼けるという意見もありますが、ここでは 一般の家庭の台所で焼くことを想定しています。
ガスコンロに付属の、いわゆる“魚焼きグリル”で焼くと、返しが難しく、また早くに表面が焦げてしまって中までうまく 焼くことができません。ウナギを焼くにはガスコンロの上に乗せるタイプのいわゆる“魚焼き器”が最適です。 スーパーマーケットやホームセンターで普通に売られているもので結構です。理想を言えば、少し網の位置が高いものが 望ましいでしょう(焼けムラが少なくなる)。 また、焼く前に、コンロにアルミホイルを敷いておくことをおススメします。ウナギを焼くと沢山の脂やタレが落ちて、コンロがかなり汚れてしまいます。
ここから、焼きの説明に入ります。



(1)網を熱し、ウナギを乗せる

あらかじめ強火で網をよく熱しておきます。十分に温まったら、火を少し弱め、ウナギを乗せます。私は皮側から焼きますが、 身から焼く方もいます。皮表面のヌメリ成分が白くなったくらいでひっくり返し、身側もほんのり透明感がある状態から、透明感が無くなるくらいまで焼きます。 (※写真では串はすべて平行に打ってありますが、本当は少し扇型に近いように打った方が返しやすいです)



(2)少し火を弱め、返しながら焼く

その後、ほんの少し火を弱め、中火か、それ前後くらい(コンロの性能により異なります) にして、何分かごとに返しながら焼き続けます。



火の大きさは、そのコンロの火の強さ、網と火の距離により調節しますが、 私の家のコンロ、網ではちょうど中火くらいが適当です。 焼いていくとだんだん身の色が変わっていきます。はじめは先にも言ったようにほんのり透明感がありますが(透明感のあるクリーム色。 脂が少ないほど、より透き通る)少し焼いただけで透明感が無くなり、白っぽくなります。



脂が少しずつ染み出てきます。しかし、このときのウナギはまだまだ“生焼け”状態です。こんな状態で早々とタレを塗ってしまっては、“臭い”という評価が 下って当然です(実際臭いと思います)。



(3)白焼きの完成

白くなってからも同じくらいの火力で何度か返しながら焼き続けると、少しずつ表面の色がキツネ色に変化してきます。 表面に染み出た脂で揚げるような状態です。身のほぼ全体がキツネ色に変わったら、やっと白焼きが終わります。 ここまでタレは付けてはいけません。



皮目の焼け具合ももちろん重要で、こちらも同じように返しながら焼いていきます。 皮と身の間には脂肪層が発達しています。臭み成分の多くは脂に溶け込む。つまり、この部分をうまく焼いて、脂のはじけるのと同時に臭み成分を 揮発させてやればいいわけです。



はじめは皮表面のヌメリが変性し、白っぽくなります。ヌメリの臭いは焼けばなくなる ので、特に何もせずそのまま焼いても大丈夫です(参考:実験2)。その後、ヌメリは見た目にも気にならなくなり、はじめは生っぽかった 皮が身が縮まることによって少ししわっぽくなります。さらにしばらく焼くと皮と身の間、あるいは皮のあちこちから脂が染み出てくるような 状態になってきます(染み出てきます)。皮がウナギ自身の脂で“揚がって”きます。少し焦げ始めたくらいでやっと皮が完全に焼き上がります。 あまり焦げないようによく返すことも大事です。



ここまで焼くのに、45cmくらいのもので約25分、55cmで約30分、60cmで35分ほどかかります(もっと長いこともあります)。この日は14回返しました。
何度も言いますが、まだタレは付けていませんし、途中で付けてはいけません。 ウナギの場合、中までしっかり焼けた状態にするために、返しと長い時間をかけることが必要なのです。 昔ながらの美味しいウナギ屋さんに行くと注文してから出てくるまで30分かかることはざらにありますが、自分でウナギを焼いてみるとその理由が分かるはずです。

蛇足ですがウナギは焼くとよく縮み、生の状態の6割くらいになってしまいますが、これは背骨を切除していることによります。



(4)タレをつける

さて、やっとタレを付ける段階に入ります。
まずハケで身側全体にタレを塗り、強火で少し焼きます。あっという間に焦げてしまうので、タレの水分が蒸発してきたなと思ったらすぐに火から上げます。 これを2回繰り返し、最後に、身側と、皮側にも全体にタレを塗ってほんの少し焦げるぐらいまで(好みにもよりますが)焼きます。 タレは一度塗っただけでは十分に色が付きませんし、脂の乗った個体では脂がタレを弾くのでなかなかタレが乗りません。 一方の皮側は、もちろんタレを塗った方が良いのですが、焦げすぎるとせっかくのパリパリに焼いた皮が焦げでカチカチになってしまう ことがあるため、一度くらいにしておいた方が安全です。



これでやっと、蒲焼きの完成です。相当時間がかかりますが、長い時間をかけてじっくり焼くことこそ、ウナギを美味しく味わう秘訣なのです。 ちなみに、このウナギは脂度4と、まずまずの脂の乗りでした。



【補足】ウナギの脂度と焼け方
ウナギの脂の乗り具合」でも書いていますが、天然のウナギの脂の乗り方や、質は本当にさまざまです。脂がよく乗っているものもいれば、そうでないものもいます。 脂の乗り具合は、直接的にウナギの味や、焼け方に影響します。脂のよく乗ったものは脂が弾けて、まるで油で揚げたような状態になりますが、 逆に脂の乗っていないものは干からびたようになってしまうため、同じように焼いても焼け方(見た目)がかなり異なります。(リンク:ウナギの脂度



○まとめ

1) 白焼きはじっくり時間をかけて返しを入れつつ弱中火ぐらいで行う。
2) 白焼きが終わるまでタレは付けてはいけない。
3) タレは何度か付ける。

美味しい蒲焼きを食べるために、この三項は最低限守りましょう。



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